2019年7月29日月曜日

2019 INDYCARレポート R13 ホンダ・インディー200 アット・ミッド・オハイオ Race Day 決勝:スコット・ディクソンがミッド・オハイオ6勝目

Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
 ディクソン、完成度の高い2ストップ作戦をコンプリート!

 予選8位だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)がミッド・オハイオ(全長2.258マイル)での90周のレース=HONDAインディ200アット・ミッド・オハイオを制した。
 燃費をセーヴしながら速く走る2ストップ作戦は、昨年アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)が見事に決めてブッチギリ優勝を飾ったものが、今年はディクソンがさらに完成度の高い2スティントを実現し、大量リードを築き上げ、最後はチームメイトの猛追を受けたが、それを退けて今シーズン2勝目、ミッド・オハイオでの6勝目を挙げた。

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最終スティントでユーズド・レッドの奇策!
しかし残り10周でタイヤは完全に売り切れに!!

 
 2回目、つまりは最後のピット・ストップを終えた時点でディクソンは2番手以下に15秒以上ものリードを持っていた。しかし、セカンド・スティントがあまりにも調子が良く、最後もレッドで行こうと判断したのが失敗で、予選で4周走らせていたユーズド・レッドは彼の予想より早くギブ・アップ。残り10周を切った後、セカンド・スティントより1周につき2〜3秒も遅い走りしかできなくなった。
 ディクソンとローゼンクヴィストの差は目に見えて縮まって行った。ローゼンクヴィストは作戦を2ストップから3ストップへレース中に変更、66周目に最後のピット・ストップを行なって安定感の高いブラック・タイヤを装着した。それに対してディクソンは60周目からずっとユーズド・レッドで走り続けていた。 

 
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最後はローゼンクヴィストとチームオーダーなしのギリギリの勝負
決着はインディーカー史上3番目のクローゼストフィニッシュに

 
 しかし、彼らはチームメイトである上、ディクソンはタイトル争いに残れるか否かの分かれ目的状況。ルーキーは2位キープを要求されるのが普通だ。
 驚いたことに、チップ・ガナッシ・レーシングはローゼンクヴィストに「ディクソンとレースをしていい。ただし、相手がチームメイトであることは忘れないように」と無線で指示を出した。
 残してあったプッシュ・トゥ・パスを使って周回遅れをかい潜り、ディクソンは逃げた。しかし、残り2周となった時、ついにローゼンクヴィストも周回遅れを全員クリア。二人の間には誰も走っていなくなった。
 最終ラップ、ローゼンクヴィストは急激に差を縮め、ホース・シューと呼ばれるターン2でディクソンのインに飛び込もうとした。インサイドを完全に抑えるラインをディクソンは採らなかった。そして両車は軽くだが接触。あわや2台揃ってスピン・オフか!
というシーンになった。
 インディカーで初勝利を挙げる大きなチャンスを掴んだローゼンクヴィストだったが、6度目のタイトルに向けて絶対に優勝が欲しかったディクソンも闘志を見せてトップを守り抜いた。ゴールでの2人の差は0.0934秒。これはインディカーのストリート及びロードレースにおける史上3番目に僅差のフィニッシュとなった。

「ローゼンクヴィストはフェアに戦ってくれた」とディクソン
逆転タイトルに向けてさらに闘志を掻き立てる

 

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 歴代3位の優勝数「45」を「46」に伸ばしたディクソンは、「予選はギヤの選択ミスがあって、自分たちのスピードをラップ・タイムに反映させることができなかった。マシンの感触はずっと良かった。今日のレースでも自分たちには安定した速さがあった。ただし、最後のスティントにユーズドのレッドを選んだのは、僕自身の失敗だった。おかげで最後は凄い戦いになった。周回遅れを何台かパスしていたことが最後に効果を発揮してくれたが、ファイナル・ラップでフェリックス・ローゼンクヴィストがアタックして来た。なんとかパスさせないで済んだが、それは彼がチームメイトで、素晴らしいドライバーで、本当にフェアに戦ってくれたからだった。チームメイトじゃなかったら、コースから弾き出されていただろうね。ターン2はトリッキーなコーナーなので、インにぴったりつかないラインで走った。それを彼はチャンスと捉えたようだったが、あそこでインを明け渡す気は無かった。今後、彼は多くの勝利を重ねることになるだろう」とディクソンは話し、「最終戦はダブル・ポイントだし、逆転タイトルは十分に可能。しかし、今の時点でポイントを勘定しても仕方がない。今日のように優勝すれば、それが自分たちを目標に近づけてくれる。次のポコノから、全てのレースを全力で戦うだけだ。今日は優勝を目指し、それを達成した。作戦もマシン作りも最高だった。チームの力だ」と締めくくった。

ニューガーデン、最終ラップに痛恨のコースアウト
ロッシも5位に終わるがポイント差は再び接近!

 

ニューガーデンは、ラストラップにハンター-レイを強引にパスしにいって接触、コースアウト。40周目にトップで入ったピットストップで作業ミスが発生。大きく順位を落としたことが、ラストラップの焦りにつながったのか? Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
  53点を稼いだディクソンはランキングこそ4番手のままだが、最終ラップにコース・オフしたポイント・リーダー=ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)との差を98点から62点に縮めた。ポイント2位でミッド・オハイオ入りしたロッシは、レースでの走りに去年のような切れ味がなかった。それでも5位でフィニッシュし、ニューガーデンとの差は16点と再び非常に小さなものになった。






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 ポイント3番手のシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は、ニューガーデン、ロッシ以上にミッド・オハイオで苦戦していたが、こちらも粘って6位フィニッシュ。ニューガーデンとのポイント差は47点になった。
 ホンダはロード・アメリカ以来の勝利。今季6勝目はは1-2-3フィニッシュとなった。

佐藤琢磨、序盤のアクシデントから燃料がフルに入らなくなり19位


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 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)はスタートが17番手で、レースは19位という結果となった。「スタートで順位を上げることができたんですが、直後のS字セクションでアウト側にいたジェイムズ・ヒンチクリフ(アロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が曲がり切れなくてバック・オフしたのか、その後ろにいたマーカス・エリクソン(アロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が急激にインに切り込んで来て僕とラインがクロスする形になって接触。タイヤがパンクし、そのせいでコース・オフして、その時に給油口に砂や砂利が入ったみたいで燃料がフルに入らないトラブルに見舞われました。スタート後1周目にピット・インしてタイヤを交換。ブラック・タイヤでの走行ではトップより速いペースを保てていただけに残念」と琢磨は話した。プラクティス3回と予選ではマシンが定まらず、ファイナル・プラクティスでも感触はあと一歩と感じていた琢磨だったが、レースでのマシンは戦闘力のあるものにできていたのだ。



 残るはポコノ、ゲイトウェイ、ポートランド、ラグナ・セカの4戦。62点差の中にいるポイント・ランク4番手までのドライバーたちがチャンピオン候補に絞り込まれたと見てよいのではないだろうか。今回ポール・ポジションだったランキング5番手のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は、4位でのゴールでポイント・リーダーとの差は148点。逆転はまだ可能だが、非常に難しくなったと言わざるを得ない。ポイント6番手だった琢磨は、ひとつポジションを下げて7番手となった。今回3位フィニッシュし、第2戦以来となる今シーズン2回目の表彰台に上ったライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が獲得ポイントを琢磨より11点多い333点としたのだ。

Jack Amano

1 件のコメント:

  1. チャンピオン争いをしているベテランと ルーキーにチームオーダーを出さなかったチップ・ガナッシが一変で好きになりました。

    これがもしロジャーペンスキーだったらチームオーダーを出していただろうと私は思いますが、天野さんはどう思いますか?

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