2025年8月19日火曜日

2025 INDYCAR レポート:アレックス・パロウ 2025年チャンピオンシップ記者会見@ポートランド チーム・オーナーのチップ・ガナッシ、 チーム・マネジャーのマイク・ハルも同席

 

Photo:Chip Ganassi Racing

 

―― アレックス・パロウは今日のレースで3位フィニッシュし、2025年NTTインディーカー・シリーズ・チャンピオンとなりました。3年連続、4回目のタイトル獲得です。チャンピオン・ハットの被り心地は?


アレックス・パロウ:デザインも書いてあることも気に入ってます。いい感じで自分にフィットしています。タイトル獲得を決定できて本当に喜んでいます。今年の自分たちは目標をふたつ設定していましたが、そのうちのひとつをこうしてまた達成でき、3年連続チャンピオンになれました。いま僕の両隣りにいいるふたりが素晴らしい仕事をし、凄い能力を発揮するチームを作り上げてくれました。そのおかげで僕はどのレースでも勝つチャンスが与えられ、どの年もチャンピオンを目指した戦いを行うことができています。

 本当に素晴らしい時間が続いて来ていますが、今年は奇跡的という表現さえ超えるものになっています。インディー500で勝ち、その上で更に多くの勝利を重ねて来ました。今日も勝ちたいと考えており、コース上で全力を尽くしました。残念ながら望んだ通りの結果とはなりませんでしたが、それでも本当にハッピーです。


チップ・ガナッシ:まだ2レース残っている。


アレックス・パロウ:そうです。僕らには、まだ今シーズンは2レースで勝つチャンスがあります。まだインディーカー・レコードの10勝に並べるかもしれない。いずれにせよ、正直な話、今の私はとても幸せです。自分がインディーカーで4回もチャンピオンになれるなんて考えたことがありませんでしたから。これからも、一瞬一瞬を楽しんで行くつもりです。


―― インディー500優勝とチャンピオンシップ獲得の両方を果たす史上30人目のドライヴァーとなりました。


アレックス・パロウ:嬉しいです。


―― 今日のレース終盤もプッシュしていましたね。なぜですか? コース・オフしたのはミスを冒したからですか?


アレックス・パロウ:僕らはレースで勝つためにここに来ています。それだけがこの場所にいる理由です。僕らが何度も言って来たことです。僕らはここに来て、チャンピオンシップ獲得という大きな目標に直面もしていましたが、自分たちの中での優先順位は、常にレースでの優勝の方が上です。どの週末も勝つことを目指していす。勝つために必要なものが自分たちに揃っている。それがわかっていました。

 レース終盤、クリスチャン・ルンドガールドをパスするための小さなチャンスを2回見つけました。同じことがウィル・パワーに対しても可能だと考えていました。しかし、その思惑通りにはなりませんでした。全力を投じました。3位フィニッシュでもタイトル獲得がなることはわかっていましたが、僕らは勝ちたかったんです。


―― おめでとう、チップ。これで17回目のインディーカー・シリーズ・チャンピオンです。そして、あなたたちにはシリーズのスター・ドライヴァーがいます。


チップ・ガナッシ:おそらく、その表現は的確ですね。アレックスほど静かに、熱心に自らを向上させようと働き続ける人を私は知りません。今年の初めに私は言いました。私たちはまだ彼の才能の表面を引っ掻いているだけだ、と。今シーズンに限った話としても、彼の燃料タンクにはまだまだ力が残っていると思います。

 来シーズン以降に向けた力も、まだまだたくさん保持している。彼が今年のインディアナポリス500の前に自ら話した”意欲”、彼の定めたゴール、インディアナポリスでのレースを終え、次のレースへと向かった時の姿を知っているでしょう?


 我々はあのレースで勝ちましたが、彼はより大きな目標=チャンピオンシップのことを忘れなかった。

 これ以上に嬉しいことはありません。私はアレックスに感謝するのは勿論のこと、私たちのためにはたらいてくれている人々全員に感謝します。過去16回のタイトル獲得に手を貸してくれた全ての人たちにも感謝します。多くの人々はもう私たちのチームに所属していませんが、彼らの功績がそれらのタイトルには残されているのです。しかし、今日の私たちは17回目のタイトル獲得を祝いたいと思います。本当に、これ以上の幸せはありません。


―― すごいドライヴァーたちを走らせて来ましたね。アレックス・ザナルディ、ダリオ・フランキッティ、スコット・ディクソン……。そして今日、アレックスは四度目のタイトルを手に入れました。マイク、これをどう思いますか?


マイク・ハル:フットボールでは、ただのクォーターバックではなく、優秀なクォーターバックが必要ですが、アレックスにはそれが備わっています。非常に優れたアスリートがレーシング・マシンを駆っている。チームには攻撃担当と守備担当が必要もあります。私たちのショップにはそういう人たちがいて、現場に関しても同様であることは、皆さんが今日ご覧になった通りです。3つのピット・ボックスすべてで、同じように素晴らしい仕事ぶりが見られました。


 そうした努力があってこそなんです。アレックスは私たち全員を代表しています。彼はチップ・ガナッシ・レーシングの過去も、現在も、未来も代表しています。私たちはアレックスのような素晴らしいドライヴァーがチームと共にあることを誇りと感じ、これがとても長い時間に渡って続いて行くことを願っています。彼が自分の仕事に飽きてしまわないことを望んでいます。


―― チーム・オーナーとして、アレックスのようなドライヴァー、3年連続でチャンピオンになるようなドライヴァーがいるのは、どういう意味がありますか?


チップ・ガナッシ:見ての通り、それが全てですよ。チャンピオンシップを獲得することこそが私たちの目標なのですから。優れた人材を集めたグループを作り、ベストのタイミングでベストのドライヴァーを起用する。 エンジンもタイヤもシャシーも、エンジニアたちも、正しいものを選ぶ。それらができた結果がタイトル獲得だと思います。私にとっては、本当に大きな意味があります。

 同様に、インディアナポリスの本部で働いている多くの人たちにとっても、タイトル獲得は大きな意味があります。私の家族、アレックスの家族にとっても同じでしょう。それ以外にも150もの家族が、毎週、私たちの肩に支えられています。


―― 今日はあなたにとってどんな日になったでしょう?


アレックス・パロウ:最高の1日ですね。今年の自分が感じて来ているのは、信じられないことですが、毎週々々、物事が良くなって行っていた、ということです。とても多くのレースで勝利しました。インディー500で勝ちました。あのレースでの勝利の後には、感激の爆発のようなものを感じました。そのことを世間の人たちは、毎日僕に思い出させてくれます。それもまた嬉しいと感ずる、特別なことなんです。

 今日、私は4回目のインディーカー・タイトルを獲得し、同時に、チップ・ガナッシ・レーシングにもチャンピオンシップをもう1回もたらすことにもなりました。シーズンが終わるより少し早い時期にそれを決められたことも喜んでいます。

 最高の気分です。タイトルを獲得する。その喜びはどんどん大きくなって行っています。今年のタイトルを2021年や昨年のものと比べることはできませんが、今年のタイトルは明らかに、自分の人生の中で最も幸せで、最高のものです。


―― レース終盤、何が起きたか説明してください。ルンドガールドをパスしたかったが、彼に押し出された?


アレックス・パロウ:そうです。私には二度チャンスがありました。最初の時、私は彼の前に出るところまでは行けたんですが、コーナーの出口でアクセルを踏み込めなかった。私は攻撃的に仕掛け、次はアウトからチャレンジしました。

 アウトから行くのは、普通なら良いアイディアではないとわかっていましたが、そちらにしか隙を見つけることができなかったので。チャンスはそこにしかないと見えました。自分の後ろを走る4番手のドライヴァーとの間には8秒もの差があるとわかっていたから、スピンをしちゃったり、何かが起きても大丈夫と見ていました。トライをしないで家に帰りたくはなかった。ベストを尽くしました。僕が彼と同じ立場だったら、きっと全く同じことをしたでしょう。相手にそれをやられると、いい気持ちはしませんが。私はアウトからのパスを仕掛けていたので。


―― まだプッシュ・トゥ・パスの残り時間も多く、同じようにパワーまでもパスするチャンスがあるように見えていましたが?


アレックス・パロウ:ルンドガールドをパスできたら、パワーにも同じようにアタックできていたでしょう。あの先は、まだ何が起こるかわからない状況だった。僕らにはそれを実現できるだけのマシンがあった。パワーのパスにトライするだけのタイヤも、プッシュ・トゥ・パスもあった。


―― チップ、アレックスを初めとする今のチームによってこれだけの成功を収めていると、将来に向けて甘やかされてしまう? あるいは、期待が更に増す?


チップ・ガナッシ:他のドライヴァーの起用は、今後は間違いなく難しくなるね。今年のようなシーズンを送ると、キャリアで1勝か2勝しか挙げられなかったドライヴァーたちと話す時、申し訳なく思う。マイクにいつも言っているのは、我々がかなり甘やかされているということ。私たちのチームで走るチャンスについて話をしに来る優秀なドライヴァーたちがいるが、私はパロウ、ディクソン、フランキッティといったドライヴァーを起用し、甘やかされて来ている。


―― アレックス、あなたはここに勝つためにやって来た。あなたを向上させ続ける原動力は何ですか?


アレックス・パロウ:モータースポーツに対する愛情。私はレースが大好きなので。チームと一緒に働く、メカニックたちやエンジニアたち、レースウィークエンドに関わる人々全員と一緒に仕事をして、少しでも力を向上させ、誰よりも強くなるのを目指すことが好き。進歩をするためにトライをし続ける。マシンでも、ドライヴィングでも、自分たちが良くできる部分はすべて良くなるように奮闘する。以前の自分たちより、ほんの少しでも良くなれるよう頑張る。

 それが僕らの原動力。チャンピオンシップとか、数字とかじゃない。もちろんそれらは重要だし、自分たちも大好きなものなんだけれど、それらは与えられる褒美。僕らが好きなのは、毎週々々、コースに来て競い合うことの方なんだ。


―― アレックス、レース序盤にはあなたの目の前で色々と順位変動などありましたが、どのようにして自分が達成すべき目標に向け、自分を冷静に保ち続けられたのでしょう?


アレックス・パロウ:何が起きているかは把握していました。ふたつの作戦に分かれての戦いとなっていましたね。私たちは、自分たちが実際に置かれることとなる状況より、もっと良い方向に進んでいると感じていました。最初のピット・ストップを行った時、私はトラフィックの中にいて、彼らを抜いて簡単に前に出て行くことができませんでした。彼らの間を潜り抜けて行くことはできましたが、それには15周もかかってしまった。トップを行くパワーとの差を縮めるラップをこなせず、彼との差は20秒にまで広がりました。

 それで勝つ可能性が低くなることはわかっていました。タイヤ、燃料、プッシュ・トゥ・パスのいずれにも多くの負担をかけねばならない状況になったので。それでも、最終的に僕らはパワーの背後に迫りました。20秒の差を取り戻したと言っていいでしょう。私たちの(終盤の)ペースはとても素晴らしかったということの証明です。しかし、その先のパスが難しかった。


―― パト・オーワードがトラブルを抱えた時、チームから何か情報を得ましたか? そして、それによって安堵したり、何か心境の変化はありましたか?


アレックス・パロウ:はい。ストレートのコースサイドにあるスクリーンでカー・ナンバー5がすごくスロー走行をしているのが見えました。その後、バリー(・ワンザー)=パロウ担当ストラテジストがそれを無線で伝えてくれました。チャンピオン争いがそういう方向に進むことは望んでいませんでした。

 私たちとしては、すでにレースで戦い、勝つことに気持ちがシフトしていました。私としては、守りに入ったり、誰かのマシンのポジションをチェックしたり……というレースをしてはいませんでした。あのカー・ナンバー12、パワーに照準を合わせていました。彼を捉え、パスしてやろうと考えていました。オーワードがスロー走行となった時点で、自分たちがチャンピオンになれたはず……ということはわかりましたが、自分たちはこのレースでも勝つことができると考えていました。


―― チップ、レース終盤にアレックスが激しい2番手争いをしていたことをどう感じていましたか?


私が個人的に得た情報では、あなたはドライヴァーたちに、”大きな絵”(最終的な目標)を思い出させようとしていた、何のためにレースをしているのかを何度も告げたということですが?

 おそらく、オーナーたちというのものは、”チャンピオンシップを獲得したのだし、ゴールできる順位でゴールしよう、という考えなのかな、と。


チップ・ガナッシ:あなたと同意です。私は何度もそうしたことを言っていまいた。しかし、それらは状況にもよります。ドライヴァーにもよるんです。アレックスが言ったように、私たちは今回のレースに対して、カー・ナンバー10のチームに関しては、他のすべてのレースと同じように勝つことを目指すと決めていました。わかりますか?

 そうやって私たちは現在の位置にいるんです。私たちはチーム内でこの件について何度も話し合いました。そして今日、私たちは何も変えずに戦いました。

 私たちは、”ヤツより前にでろ”とか、”ヤツの後ろに回れ”といった指示は出しませんでした。神様のようなことはできません。私たちが今ここにあるのは、ひとつの戦い方を実践し続けたことによってなんです。それを今日、変えることはしませんでした。ミルウォーキーでもナッシュヴィルでもそれを変えるつもりはありません。 アレックスが2位とか3位でフィニッシュしている時、私はそれを良いことと捉えています。今日のレース中、彼がコース・オフした時、私の心臓は止まりそうになりました。しかし、あの時以外、私は彼の戦いぶりに満足していました。


―― 今日勝てなかったことで1シーズン最多勝利のインディーカー・レコード樹立は不可能になりました。しかし、タイの10勝はまだ可能性を残しています。その記録をあなたは意識していますか?


チップ・ガナッシ:そうでもありません。それらは、いつか孫と記録や数字について話す時のためのものでしかないでしょう。私たちは、シーズンが始まる前に幾つかの目標を設定しました。

 私たちには、まだ達成ができていない目標が残っています。スコット・ディクソンのポイント・スタンディングを今より上にしたい。彼にはそれが可能です。キフィン・シンプソンも、もっとランキングは上げないといけない。それらの点に今の私たちはフォーカスしています。チャンピオンシップ、レコード、自分たちが何をなし遂げたか……それらについて話すことが十分にできるだけ、オフシーズンは長いですし。


以上



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