2025年8月31日日曜日

2025 INDYCAR レポート R17 ボーシェッタ・バーボン・ミュージック・シティ・グランプリ:ナッシュヴィルで注目されるふたつのバトル

 

Photo:Penske Entertainment

昨年までのイヴェント・スポンサー、ビッグ・マシーンのオーナーが
販売を開始したバーボンが今年のイヴェント名に

 NTTインディーカー・シリーズの2025年シーズン最終戦は、ボーシェッタ・バーボン・ミュージック・シティ・グラン・プリ・プレゼンテッド・バイ・ウィルスコット。昨年までのイヴェント・スポンサーはレコード・レーベルのビッグ・マシーンだったが、その会社のオーナー、スコット・ボーシェッタが今年バーボンの販売を開始したので、そのブランド名をイヴェントに冠することとした。彼らはこの5月にチップ・ガナッシ・レーシングの創立35周年を記念したバーボンを出した会社でもある。
 昨年に続き、最終戦が行われるのはナッシュヴィル・スーパースピードウェイ。ナッシュヴィルの東南30マイルちょっとのテネシー州レバノンにある全長1.33マイルのオーヴァル・コースだ。昨年の前にも、インディーカー・シリーズは同コースでのレースをしたことがあり、今回は10回目の開催となる。



注目のポイントその1、ランキング3、4位争い
 

 最終戦で注目すべき戦いは、以下のふたつだ。
 その1は、ランキング3、4位争い。インディーカー・シリーズへのフル参戦4年目、アロウ・マクラーレンからの出場初年度のクリスチャン・ルンドガールド(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)は、6度のタイトル獲得歴を誇る大ヴェテラン=スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)とのポイント差6点で最終戦を迎えている。この差をルンドガールドがひっくり返した場合、彼は自己ベストの8位(2023年)を大きく上回るシリーズ・ランキング3位で2025年シーズンを終えることとなる。シヴォレー、そして、マクラーレンは、すでにランキング2位を確定しているパト・オーワードに加え、ランキング・トップ3にふたり目のドライヴァーを送り込むことを最終戦の目標としている。

Photo:Penske Entertainment

 実は、ルンドガールドのポジションも安泰ではない。ひとつ後ろのポイント・スタンディング5番手につけているのはカイル・カークウッド(アンドレッティ・グローバル/ホンダ)。フロリダ出身の202
年インディー・ライツ・チャンピオンはルンドガールドと同じくフル参戦は4年目だが、今シーズン中に3勝を挙げ、優勝回数はすでに5回にもなっている。その上、彼は昨年のナッシュヴィルでのポール・ポジション・ウィナー。すでにワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイでオーヴァル初優勝も経験済み。最終戦ナッシヴィルでカークウッドは優勝候補のひとりに目されており、ルンドガールドとしてもうかうかはしていられない。ふたりのポイント差は21点と、ルンドガールドとディクソンのそれとは違い、やや大きなものとなっているが、彼らのランキングが入れ替わる可能性も十分にある。

 「我々の今週末のゴールは明快だ。先頭グループで戦い、シリーズ・ランキング3位になること。アロウ・マクラーレンでの初めてのシーズンは非常に楽しいものとなっている。最終戦を良い結果で締め括り、チームの努力に報いたい。先週のレースで我々はトラフィック内での速さを見せていた。そのスピードをナッシュヴィルにも持ち込みたい」とルンドガールドは意気込んでいるが、ディクソンは手強いよ。

参考
スコット・ディクソンのランキングと優勝回数
2025年 ?位(1勝)
2024年 6位(2勝)
2023年 2位(3勝)
2022年 3位(2勝)
2021年 4位(1勝)
2020年 1位(4勝)
2019年 4位(2勝)
2018年 1位(3勝)
2017年 3位(1勝)
2016年 6位(2勝)
2015年 1位(3勝)
2014年 3位(2勝)
2013年 1位(4勝)
2012年 3位(2勝)
2011年 3位(2勝)
2010年 3位(3勝)
2009年 2位(5勝)
2008年 1位(6勝)
2007年 2位(4勝)
2006年 4位(2勝)
2005年 13位(1勝)
2004年 10位
2003年 1位(3勝)
2002年 13位
2001年 8位(1勝)

 改めて見て驚く。2005年から毎年=21年連続で、少なくとも1勝。通算59勝。AJ・フォイトの67勝に並ぶまで、あと8勝。2006年から20年連続で一桁ランキング。トップ5より下だった=ランキング6位=がそのうちで2年だけ。2006年からは10年連続でトップ5入り。今週末の最終戦でルンドガールドの逆転を許さなければ、ディクソンのシリーズ・ランキング・トップ3入りが、実に通算16回目になる=25年間のインディーカー・キャリアで(!!)
敬服。今週末に優勝してシーズンを終える可能性も十分にあるので、ディクソンには。

注目のポイントその2、ルーキー・オヴ・ザ・イヤー争い

 バトルその2は、ルーキー・オヴ・ザ・イヤー。インディアナポリス500でポール・ポジションを獲得したロバート・シュウォーツマン(プレマ・レーシング/シヴォレー)と、ロード・アメリカPPウィナーのルイ・フォスター(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ)がその座を争っている。リードしているのはフォスターの方で、その差は8点。今年のこれまでのオーヴァル5戦でのふたりの戦績を振り返り、好成績に「*」をつけると以下の通りになる。

ロバート・シュウォーツマン
インディー500  **予選PP** 決勝26位
ゲイトウェイ     予選24位   **決勝10位**
アイオワ1    予選16位   決勝20位
アイオワ2    *予選11位* **決勝9位**
ミルウォーキー  予選21位   決勝18位

ルイ・フォスター
インディー500  予選22位   *決勝12位*
ゲイトウェイ   予選21位   決勝26位
アイオワ1    *予選12位* 決勝14位
アイオワ2    予選16位   決勝14位
ミルウォーキー  予選22位   決勝17位

 フォスターはインディーNXTを2シーズン戦って昨年チャンピオンとなったので、オーヴァル経験がそこそこあるが、チームともどもオーヴァル経験なしで今シーズンを迎えたシュウォーツマンの方がパフォーマンスは良い。フォスターは、昨年のインディーNXT最終戦ナッシュヴィルで優勝している点を精神的な拠り所として戦うこととなるが、果たしてどうなるか。
 ナッシュヴィルは舗装がコンクリートでタイヤに厳しく、1.33マイルというショート・オーヴァルの範疇に入るコースながらコーナー部のバンクが14度と急でストレートも6度/9度のバンクが付けられていることからキャラクターが完全にハイ・スピード・オーヴァルのそれになっている。さらに、ソフトとハードの二種類のタイヤを使わねばならないルールなので、ユニークなコースを使ったユニークな戦いが繰り広げられる。ルーキーたちにとっては、普段以上、過去のオーヴァル5戦よりも厄介な戦いとなる最終戦なのだ。

 「ナッシュヴィルでは一度レースを経験している、インディーNXTで。良い週末だった。チャンピオンになれたシーズンを、優勝で終えることができたんだからね。コースは大きく、簡単にアクセル全開で走り切れるので、返ってチャレンジング。特に予選が難しい。マシンをトリムして、アクセル全開を保ちながら、どれだけ小さなダウンフォースで走れるかが勝負。そういう点で、実におもしろいサーキット。ターン4に大きなバンプもあり、ドライヴィングを困難にしている。シリーズの他のオーワードとちょっと違うキャラクターなのがナッシュヴィルで、ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイとテキサス・モーター・スピードウェイの中間といった感じ。僕はテキサスを実際に走ったことはないけど……。インディアナポリスほどではないけれど、大きなオーヴァル・コース。平均スピードは190mphぐらいになる。自分にとっては楽しいコースでもある。もうシーズン最終戦。シーズンは凄いスピードで進んで来た。自分のシーズン・ハイライトは、ロード・アメリカでポール・ポジションを獲得できたことと、ファイアストン・ファスト6に複数回入れたこと。予選で強さを発揮できたシーズンとなった。しかし、それよりも、インディーカーカー・レースに関して多くを学び、理解を深め、進歩を遂げるべく奮闘することをおおいに楽しめたシーズンだった。競争力を身につけるためには何をすべきか、速くはるためには何が必要かを追求していた。最終戦は、ルーキー・オヴ・ザ・イヤーを自分のものとすべく頑張るつもりだ」とフォスターは語っている。

ナッシュヴィルに関する興味深い情報

 2002年、ナッシュヴィル・スーパースピードウェイで開催されたインディー・レーシング・リーグ主催のレースでは、アレックス・バロンがブレア・レーシングのダラーラ/シヴォレーに乗って優勝した。バロンとブレアのコンビネーションは、その年のインディー500では4位フィニッシュし、年間ランキング5位となっている。
 チーム・オーナーはラリー・ブレア。彼のチームはまだ参戦2年目だったが、元ドライヴァーのトム・グロイをチーム・マネジャーに据え、ジョン・ディックをエンジニアに迎え、”ファイター”のバロンとともに目覚ましい活躍を披露した。

 このレースで勝ったエンジン、ブレア・レーシングが採用していた3.5リッター/シヴォレーV8エンジンは、マクラーレン・パフォーマンス・テクノロジーズが組んだものだった。1985年からアメリカのトップ・モータースポーツを離れていたマクラーレンが、この年にインディーカーへの復帰を果たしていたのだ。

ナッシュヴィル:マニュファクチャラー別パフォーマンス

優勝
3勝 ホンダ(2004、2005、2024年)
2勝 ジェネラル・モーターズ: オールズモビル(2001年)、シヴォレー(2002年)、
1勝  トヨタ(2003年)

ポール・ポジション
2回 ジェネラル・モーターズ: オールズモビル(2001年)、シヴォレー(2005年)
2回 ホンダ(2004、2024年)
1回 ニッサン:  インフィニティ(2002年)
1回 トヨタ(2003年)
以上

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