2011年5月24日火曜日

2011 INDYCAR インサイド情報&ニュース R5 インディ500:かわいそうな男、ブルーノ・ジュンケイラ、3年間で2度も車両を譲るはめに

 インディ500の予選を通過することができなかったライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポーツ)が、予選を19位で通過したブルーノ・ジュンケイラ(AJ・フォイト・レーシング)のマシンに乗って決勝に出場することになった。アンドレッティがフォイトと交渉し、ドライバー交代が行われることとなったのだ。
強豪も苦戦した今回の予選を見事に通過しながら、残念な目にあっているジュンケイラ。しかも前回のケースから連続というのもあまりにもかわいそうだ。
Photo:INDYCAR
 ハンター-レイのマシンを彩るDHLとサン・ドロップ(ドクター・ペッパー系ドリンク)は、アンドレッティ・オートスポーツを今年からサポートし始めた新しい大型スポンサー。チームとしては新スポンサーたちのインディ500出場を何としてでも実現させたいため、出場権獲得のための最終手段に打って出た。
 フォイト御大は、「我々は長年戦っている間柄だが、相手が何か苦境に立たされている時、その事実に背を向けることはできない……少なくとも私は。大きなトラブルに遭っている人がいたら助け合う。レースの世界は、以前はそういうものだった。ブルーノ・ジュンケイラにとって厳しい決定なのはわかっている。しかし、彼も状況を理解してくれている。そのことに対して、私は誰よりも深く感謝する」というコメントを発表した。

 ハンター-レイは、「インディ500の歴史の中で、こういうことが過去に何度も行われてきたことは知っている。しかし、ブルーノに対しては悪いと感じている。彼のグリッド獲得を感謝し、彼がこの状況を理解をしてくれることを願う」と話し、「またAJのために走れるのは素晴らしい。それもマイケルにサポートされ、勇気付けられながらのことなんだから、なおさら特別だ。DHLとサン・ドロップのためにインディ500優勝を目指し全力を上げる」と新たな決意も力強く語った。
 マイケル・アンドレッティは、「ライアン、DHL、サン・ドロップ、そして他の多くのスポンサーにインディ500を戦うチャンスを与えてくれたAJには感謝をしてもし切れない。フォイトとアンドレッティがインディ500で協力するのは特別なこと。AJが我々に手をさしのべてくれたおかげでそれが実現する」と語った。ジョン・アンドレッティがフォイトのチームで走ったことはあるが、アンドレッティ本家のマイケルがフォイト・ファミリーと力を合わせるのは今回が初めてだ。

 ……と、両陣営ともドライバー交代をちょっとした美談に仕上げようと努めているが、実際には、アンドレッティがなりふり構わずライドを買って、フォイトはインディ出場権で商売をしたということなのだ。

 インディ500では、常にマシンが基準とされて来ていた。エントリーはマシンごとで行われ、「予選を通るのはマシン。ドライバーではない」という原則が貫かれて来ていた。初期のインディではマシンの性能差が大きく、レース結果に繋がる要素としてマシンの力量の方が操るドライバーの能力よりも大きかったはずで、マシンが基準とされたのは仕方がなかったかもしれない。
 しかし、マシン重視の時代はとうの昔に終わっている。歴史を重ねてインディカー・レースはスポーツとして確立され、ドライバーやチームによる競技、彼らが主役の戦いに変わっている。もちろんマシンのパフォーマンスは今でも極めて重要なのだが……。

 スポット参戦でありながら、ジュンケイラは見事に19番グリッドを獲得した。それはAJ・フォイト・レ-シングが確かな仕事をしたという意味でもあった。
 しかし、決勝進出を決めたジュンケイラは、そのマシンを奪われてしまった。ハンター-レイも言っていた通り、予選終了後のドライバー交替はこれまでにもインディ500では何度も行われてきている。

 その一番最近の例は、09年のアレックス・タグリアーニの出場だ。コンクエスト・レーシングがインディに出場するためのスポンサー資金を持ち込んだのがタグリアーニだったが、彼はバンプアウトの憂き目に遭った。その彼にマシンを提供したのが、ジュンケイラだったのだ。
 予選開催中にコンクエスト・レーシング自体が見つけたスポンサー・マネーが彼の出場には充てられていた。十分なプラクティスも行えずにアタックしたにも関わらず、ジュンケイラは予選を見事に通過した。しかし、ジュンケイラはチームメイトにマシンを譲るよう言われたのだった。雇われドライバーはチームの決定を受け入れるしかなかった。

 その晩、街の北にあるイタリアンレストランにジュンケイラはひとりでやってきた。まだドライバー交代のニュースが流れる前で、僕らは「おめでとう!」と言ったが、彼の表情は冴えず、握手にも力が入っていなかった。テーブルに着いた彼は、携帯電話で誰かとポルトガル語で話し続けていた。そもそも、予選を見事通過した晩の食事がたったひとりというところが妙だった。我々がホテルに戻ると、「タグリアーニがジュンケイラのマシンで決勝へ」というニュースが流れていた。
 3年で2度目のマシン提供をさせられるとは……。ジュンケイラには同情を禁じえない。オーバルでもロードコースでもかなり走れるドライバーなのだが、チップ・ガナッシ・レーシングから放出されて以来、チームに恵まれていない。

 ハンター-レイが乗ることになった41号車は、フォイトのチームのメインスポンサーであるABCサプライのロゴが引き続きサイド・ポッドなどを占拠する模様。残念ながら、今年復活したフォイトのトレード・カラー=コヨーテ・レッドは、DHLなどのアンドレッティ・オートスポーツのスポンサー・カラーが入って来るために姿を消す。コンウェイのスポンサーであるセブン・イレブンなどのロゴも新カラーリングでは入って来るだろう。

 これで今年のアンドレッティ・オートスポーツは、リチャード・ペテイとAJ・フォイトというアメリカン・レースを代表する凄いふたりとジョイントすることになった。何やら、100周年イベントのパワーを感ずる偶然が起きているって気がする。

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