2012年5月28日月曜日

2012 INDYCARレポート:5月27日 第96回インディアナポリス500 決勝/琢磨とレイホール、ドライバー同士だから理解できる攻めの姿勢


Photo:Naoki Shigenobu

佐藤琢磨のドライビングは冴え渡っていた。インディアナポリスでのオーバーテイクの仕方を初年度からマスターしていた、彼ならではのアグレッシブな戦いぶりは、観客席を埋めたアメリカのファンを熱狂させていた。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのマシン作りも素晴らしかった。レースを通してペースは非常に安定しており、戦闘力はトップレベルの高さにあった。ピットで陣頭指揮を執るボビー・レイホールの作戦も的確だった。ガナッシ勢と敢えて違うピットタイミングを選び、優位に立つシーンさえあった。Taku & Bobby、今年から一緒に戦い始めた彼らだが、そのコンビネーションは急速に深まって行っている。

最終ラップを迎えるコントロールラインを2位で横切った佐藤琢磨。彼のすぐ目の前にはトップを行くダリオ・フランキッティがいた。彼のドラフティングに完全に入っていた琢磨は、「任務完了!」と勝利を確信していたという。

勢いは琢磨の方にあった。そう思った直後、フランキッティのインへと飛び込んだ琢磨がスピン。タイヤから白煙を上げてコースを横切り、ウォールへとクラッシュした。フランキッティは何事もなかったかのようにターン1を立ち上がり、イエローフラッグとチェッカーフラッグを同時に受けてインディー500での3勝目を掴んだ。琢磨は200周目を走破できなかったため、1周遅れの17位にランクされた。

レース直後にボビー・レイホールは、「琢磨は勝ちに行った。戦い方はあれで良かった」とキッパリ言った。勝つことはできなかった。2位になることもできなかった。しかし、勝利に向けて全力を投じた結果は受け入れることができていたようだった。

暫くして琢磨が医務室からガレージへと戻って来た。そこへレイホールは歩み寄り、頬にキスをした。「ボビー、ごめん」と琢磨。するとレイホールは、「何を誤る必要があるんだ? お前は優勝を狙ってアタックしたんじゃないか」と答え、琢磨をガッシリと抱きしめた。

あそこで躊躇無くアタックできる。それが琢磨だ。彼だからこそ、インディー500で、最終ラップに勝負を仕掛けることが可能なポジションにつけることができた。

まだ開幕から2カ月しか経っていないが、レイホールと琢磨、レーサー同士の絆は深く結ばれ、それが今日の戦いぶりでさらに強まった。

6 件のコメント:

  1. この記事を読んだら、2人の絆の深さに思わず泣いてしまいました。素敵な内容をありがとうございます!

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  2. これ泣きますよぉ。
    アマノさんとってもいいいいレポートですね。
    琢磨シリーズチャンピオンとっちゃえばいいじゃん!
    次!次!

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  3. 最高じゃあ!!!退屈なモナコGPの後の琢磨の走りはお世辞抜きで興奮した!!

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  4. ほんとにあと一歩だったけど、琢磨はできることをすべてやったと思う。あとはダリオの寄せ方次第、琢磨にできることはあれ以上はなかったと思います。

    しかし、こんなに感動したレースは何年ぶりでしょうか。
    琢磨に改めてインディ500の面白さを教えてもらった気がします。

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  5. そして2ヶ月後には「いいかげん結果も残してくれ!」と
    願うレイホールだったww

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  6. 夢じゃないんだって思いました。
    新しいヒーローを求めていたというのは大げさかもしれません、ただ、Laps199までとWhiteFlagのあの瞬間を視聴していた皆、現地の全ての人々の歓声はこれからの後押しになってますよね。

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