2014年6月4日水曜日

2014 INDYCAR レースアナリシス 第6・7戦デトロイト レース#2:ウィル・パワーのドライビングはこれでよいのか?

荒々しい走りと荒い走り…その違いをパワーはどう考えているのか? Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
 生粋のファイターらしさを取り戻した今年のパワーだが……
 開幕戦のセント・ピーターズバーグで優勝したウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は、「負けたっていい。勝つためにハードにレースを戦う。そうあるべきなんだと自分に言い聞かせている。かつての僕は慎重になり過ぎていた年もあったけれど、今はただレースを戦うだけだ。思い切りレースをする。それだけ。僕がしたいのはレースで、持てる力を出し切って戦いたい。そして勝ちたい。今はそう考え、ポイントのことは頭の中にない。チャンピオンになりたいが、レースで勝つのも僕は好きだ。今シーズンは両方を一緒に実現できたらうれしい」と語っていた。

ロング・ビーチでの第2戦では優勝を逃す2位となったがポイント・リードを保ち、「前はポイントのことを考え過ぎていた。もうポイントのことは考えない。シーズンが進めば、それを考えなきゃならない時期も来るだろうが、今は出るレースすべてで勝つことだけに集中している。それが正しい姿だと思う。野獣にならなきゃならないんだ、囚人ではなく」と話していた。

 今年のパワーは違う。言葉の通りに彼は走っていると感じていた。生粋のファイターらしさを取り戻した印象だった。
 しかし、第3戦バーバー・モータースポーツ・パークからパフォーマンスが低下。インディー500ではピットでのスピード・リミット・オーバーでトップグループから自ら脱落。その後はヤル気がなくなったかのようにスピードダウンした。

レース#1のミラクルウインがパワーのレース#2の走りを変えた
 そして迎えたデトロイト。悲願のインディーカー・タイトル獲得には、ここで体制を完全に立て直す必要があった。そして、第1戦では珍しく運も味方につけて16番グリッドから優勝した。がむしゃらに走り続けたら勝利に手が届いた。まさにパワーの理想がカタチになったレースだった。
 そんなミラクル・ウィンが彼の内部で何か変化を起こさせたのかもしれない。そして、それは少々悪い方に出ていた。いや、少々のレベルは通り越してしまっていた。レース2でのパワーは”困ったちゃん”になっていた。16番手から勝てたんだから8番手からなら楽勝……と気負ったのか、何なのか……。「俺はぶつかったって走り続けられる」と、まさか自分に神様が降りて来たと考えたんでもあるまいが、「ぶつかられてスピンしちゃうオマエが悪い」的な暴れん坊ぶりを発揮していた。

自分は何をやっても大丈夫、と感じてはいないか?
 シンプルでピュアなヤツだし、シリーズのタイトル・スポンサーが自らのマシンのスポンサーである影響力に気づき、確信犯でラフに走っているとは考えたくない。しかし、セント・ピーターズバーグでのリスタートでブレーキ・チェック。中団グループの多重アクシデントを引き起こしてもペナルティなしで、ロング・ビーチでシモン・パジェノー(シュミット・ピーターソン・ハミルトン・モータースポーツ)を弾き飛ばしたってペナルティは課せられなかったので、「自分を咎める者はいない」なんていう確信をしちゃってるのかもしれない。そして、それが結構間違っていないかもしれないところが悲しいし、おおいに問題だ。
 自分のチームのオーナーであるロジャー・ペンスキーがデトロイトのイヴェント・プロモーターで、レースのタイトル・スポンサーはパワーたちが使うエンジンのサプライヤーであるシヴォレー。どちらもインディーカー・シリーズにとっては欠けがいのない重要な存在。だとしても、「今週は何をやってもダイジョウブ」とかパワーが考えたり、それに近い感触を持っていたとしたら大問題だ。ロング・ビーチでは、「あれがペナルティにならなかったのは自分としても驚き」と実に常識的なコメントをしていたパワーだったんだが……。


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