2014年6月3日火曜日

2014 INDYCARレポート 第6・7戦デトロイト:インディーカー・レースコントロールまたしてもお手盛り! インディーカーのミニマム2周ルールを検証

ユーズド・レッドを装着してスタートしたパワーだったが……。Photo:INDYCAR (Chris Jones)
2周目のピット・ストップで何が起こったのか?
 デトロイトでのレース2、インディーカーの出したオフィシャル・ボックス・スコア(=正式結果)を見ると、下段右側のコーション・フラッグの欄に

 番号 期間  周回数 コーションの理由
 1  1~3  3   接触:15、19、67号車 ターン3にて
 

とある。

 次にインディカーが公表しているラップ・チャートや、ピット・ストップ・サマリーを見ると、
ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)
マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)
スコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)
ミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)
トニー・カナーン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)
ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)
ジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン・レーシング)
チャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ・レーシング)
グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)
の9人が2ラップ目にピットに入っている。そして、今度はファイアストンの資料を見ると、彼らはここで装着タイヤをレッドからブラックに換えていた。ジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・ハートマン・レーシング)は1ラップ・ダウンでピット。同じくタイヤをレッドからブラックに交換した。

私は見た!インディカー・オフィシャルと
ファイアストンエンジニアがレース中密談
 インディーカーのロード&ストリート・レースでのタイヤ・ルールは、「レッドとブラック、両方のタイヤで、レース中のグリーン・フラッグ下において少なくも2周しなくてはならない」となっている。冒頭に書いたとおり、オフィシャル・ボックス・スコアによれば、レースは1ラップ目からフルコース・コーションになっていた。上記のドライバーたちはスタート時に履いていたレッド・タイヤでグリーン・フラッグ下の2周をしていないということだ。ところが、何を考えていたのか、彼らはピットに入ってブラック・タイヤにスイッチした。

 ただし、パワー、ニューガーデン、レイホール、そしてウィルソンは、ここでレッドに交換してもルールには触れない。”アクシデントの当事者はミニマム2周のルール適用を免れる”とのルールがあるからだ。ルール違反組はアンドレッティ、ディクソン、アレシン、カナーン、ハンター-レイ、キンボールの6人ということだ。
 デトロイトではレッドが明らかな不利だった。そんなタイヤをもう一度履くためにピット・インなど誰もしたくない。で、結局どうなったかというと、インディカーがまたしてもの「オーバールール」発動(苦笑)。「 “ミニマム2周” のルールは今回はナシにしますぅ」と、インディーカーはレース中に臆面開く発令した。「全員に違法性ナシ」ってな表現が使われていたが、そのハチャメチャさには呆然とさせられる。

 私は見ましたよ。インディーカー・オフィシャルとファイアストンのエンジニアが、「この連中はグリーンで2ラップしてないな」(オフィシャル)、「そうだな、もう1回レッドを履く必要がある」(エンジニア)と、この事実を確認し合ってたのを。



ミニマム2周ルールそのものの成り立ちにもインディーカーの体質が
 その場凌ぎでアレコレとルールをいじって来たツケが回って来た。ま、インディーカーはこれをツケなんぞと微塵も感じてないんだろうが。ファイアストンと考え抜いて施行したはずの自分たちのルールを、いとも簡単に反故にする思考回路は、まったくもって理解不能。そうした行為がインディーカー・レースというスポーツ、そしてシリーズを貶めてるってコトに彼らは気づいていない。
 
 「アクシデント当事者には “ミニマム2周” のルールを適用しない」なんてのもインチキなルールだが、これは数年前にダリオ・フランキッティ、及びターゲット・チップ・ガナッシ・レーシングを救済するためにインディーカーが無理矢理作ったもの。その事後ケアーなしに放置をしていたことが今回のような醜い事態を招いた。
  「アクシデントで複数のチームに迷惑をかけた張本人はタイヤを換えてもオーケーで、善良な他のチームは交換をしてはならない」では世間が納得しないってんで、止む無く、「じゃ、みなさんセーフってコトで」と、またしてもその場を取り繕ってしまった、というのが真相だろう。結果として、ルールをキチンと守って戦っている面々をないがしろにする裁定を彼らは下すことに。
 いったいインディーカーのレース・コントロールってどこを見て仕事をしてるんだろか。スポンサーや強面の強豪チーム・オーナーの顔色伺ってばかりじゃぁ駄目でしょ。レフェリーは毅然とした態度で職務を全うしないと。
以上

2 件のコメント:

  1. Amano様 明快な解説ありがとうございます。
    ****にはペナルティが下るはず、と思って観ていても
    その気配はなく、納得できないレースがいくつもありました。
    F1よりエキサイティングで面白い素晴らしいレースなのですから、公平・平等な運営をぜひお願いしたいですね。
    命がけで戦っているレーサー、チームスタッフ、メディアの皆様の努力が無駄にならないように・・・

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    1. 「我々日本人はキッチリし過ぎなんですかね? そんなコトないと思うんですが・・・。ルールは守る。破ったらペナルティが世界の常識でしょう。アメリカ人の多くに言えることですが、柔軟性、臨機応変に対する評価が大変高いです。あと、「結果が良かったんだから原則に従わなくて良かったじゃないか・・・」的な話をよくされます。原則に従うのが原則だと私は考えるので、いつも違和感を感じています。俺が世界の常識だ! と言うつもりもありませんが、インディーカーは少し世界基準から離れて運営されているというのが現状だと思いますから、そこを修正して欲しいと考えています」

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