2011年8月25日木曜日

2011 INDYCAR インサイド情報&ニュース R12 ニュー・ハンプシャー:プロテストの行方 その4 リスタート前の順位を決勝結果とした理由は何なのか?

パワーの怒りが爆発、バーンハートに噛みついた
Photo:Naoki Shigenobu
 ニュー・ハンプシャー・モーター・スピードウェイでの一件、最も大きな問題はレース結果の決め方にあった。レースはリスタートの後も続いていたが、ブライアン・バーンハートはリスタート前まで遡り、それを決勝順位とした。リスタート後もレースを続けたのはバーンハート自身だったし、残り6周で赤旗まで出してフィニッシュまでレースを続ける意向を見せたのもバーンハートだった。

 しかし、雨でレースが再開できないとなると彼は突然、「リスタート前の順位を決勝結果とする」と発表した。そんな順位の決め方はインディーカーのルールブックに載っていないというのに。しかし、ルールブックには、「シニア・オフィシャルが何でも好きなように決めていい」ぐらいの一文がある。バーンハートはその一文だけを頼りに、ウェットコンディションだったために多重アクシデントとなったリスタートを「なかったこと」にしたのだ。

 何もかもがバーンハートの自分本位、自分勝手で決められ過ぎている。彼にはインディーカー・レースを取り仕切るだけの能力が備わっていない。それが今回の騒動で改めて明白になった。ドライバーやクルー、オフィシャルたちの安全を十分に考慮意思、的確な判断を下せないという点で。
 バーンハートが「決勝順位はリスタート前まで遡ったもの」との決定をしたのは、アクシデントに巻き込まれた中にチャンピオン候補のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が含まれていたからではないのか? 1シーズンをかけての真剣勝負に、自分の愚かな判断ミスが水を指すのを避けたかったのでは? パワーが9位ではなく5位となったので、ポイントリーダーであるダリオ・フランキッティとの差がまた大きく縮まった。

 アクシデントの後にパワーは怒り狂い、両手の中指を立てて抗議し、テレビのインタビューでも強烈なコトバを並べ立ててバーンハート批判を行った。この人気急上昇中のトップドライバーの言動も少なからず影響しているだろう。彼の怒りは凄まじいものだった。それが自らの地位を危うくすることを察知したバーンハートは、パワーに良いように取り計らうのが得策と判断したのだ。そうすれば自分の判断ミスもウヤムヤにできる。見事なもんである。
 パワーはバーンハートの地位を脅かしている。実に危険な存在だ。彼のレースでのスタイルと同じように、この一件でもパワーは引き下がるつもりは一切ないようだ。「あの男にインディーカー・レースの運営をさせておいてはダメだ。もう今回で終わりにすべき。彼はこれまでにも常に間違った判断を下してきた。恥を知れと言いたい」とまでバーンハートを非難した。

 いよいよバーンハートによる恐怖政治が終わる時が訪れた。それは不思議なほど長く通用し続けてきた。彼に刃向かえばレース中に平気で不公正に取り扱われ、理不尽なペナルティを課せられる。そんな時代は終焉する。パワーは不利に扱われるなどという心配には一切囚われず、自らの意見をストレートに口にしてきた。そうしたドライバーが出現し、しかも、その男がチーム・ペンスキーというインディーカー・シリーズで最も尊敬を集めるチームで走っている。人々は彼のコメントに耳を傾ける。説得力もある。

 チャンプカー・シリーズが失速し、多くのチームが2003年からインディーカー・レーシングリーグ(IRL)インディーカー・シリーズへとスイッチした。あの頃、彼ら元チャンプカー・チームは、IRLインディーカー・シリーズで冷遇を受けていた。2008年にいよいよチャンプカー・シリーズがつぶれ、インディー・レーシングリーグのシリーズへと吸収、併合されると、ニューマン・ハース・レーシングやKVレーシングテクノロジーはインディーカー・シリーズへの参戦をスタートさせたが、今度は彼らが冷遇の対象となった。その名残りが今回のレースでも見られた。ハンター-レイのチームのオーナーであるマイケル・アンドレッティは、テレビのインタビュアーからの質問に怒りを爆発させた中でさえ、「ゴメンなブライアン」という侘びの一文を入れるのを忘れなかった。パワーの走るチーム・ペンスキーの社長、ティム・シンドリックがテレビで何のコメントもしなかったのも、バーンハートを公の場で攻撃するのは避けたかったということなのだろう。

続く

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